「日本語教師ではないが、日本語を教えることになった!」
「日本語教師ではないが、日本語の教え方をちょっと知りたい!」
という方に、読んでいただきたく、この記事を書きます。
これはズバリ、私が、「日本語教師養成講座の初日に、こんな講義を受けたかった!」という内容です。
今日は「第3弾」【補語について】です!
第1章からの流れは、下の赤枠のようになっています。
【1・2章】をご覧になっていない方は、ぜひ【第1弾】から、お読みください!
第1章で「丁寧体と普通体」、第2章で「品詞と述語」について、ご理解いただけたかと思います。
第3章は「補語」です。
補語
突然ですが、補語の前に、第2章で書いた「助詞」を思い出しましょう!
うちの 近くに 味噌ラーメンの店が できた。私は 味噌より 豚骨のほうが 好きだ。
今日、妹が その店へ 行くようだ。「おいしい」と言ったら、わたしも 行こう と思う。
上の文の赤い字で書いた「に」「の」「を」「は」「で」「より」などが「助詞」です。
思い出しましたね?
では、「補語」について書きます。
「補語? なんか聞いたことあるような…、もしかして、英語の文法で勉強した?」
⇒そうです。英語の文法でも習いましたね!(第2文型「S+V+C」の「C」でしたっけ??)
ですが、日本語教育の「補語」は英語の「補語」とは異なるので、覚えていなくても大丈夫です。
むしろ、忘れてください!
まず、前提として、1つ言わせてください。
「補語」は専門家によって、見方が異なり、どの言葉を「補語」というかは、統一されていません。
「1つにしてくれ~!」
日本語教師を代表して、こう叫びたくなりますが、このようなことは「補語」だけに限ったことではありません。いわゆる「諸説あり」です。
いろいろあっても仕方ないので、私が、下の定義をもとに、説明します!
「補語は述語を修飾(説明)する要素で、名詞+助詞(助詞がない場合もある)の形をとる。」
これだけでは、わかりません。下の文を見てください。
弟が きのう 公園で 彼女に 花を 贈った。
結論から言うと、「弟が」「きのう」「公園で」「彼女に」「花を」これらは全部「補語」です。
「補語」とは、述語を補う。つまり、述語を修飾(説明)する部分です。
日本語のカギは「述語」! 第2章で何度も強調しました。
述語はたいてい「文の最後にくる部分」でしたね。
この文の述語は「贈った」です。
「弟が 贈った。」「きのう 贈った。」「公園で 贈った。」「彼女に 贈った。」「花を 贈った。」
全部、述語を説明しているので、それぞれが補語です。
日本語の文は「補語」と「述語」で成り立っています。
そして、補語は基本的に「名詞+助詞」の形で成り立っています。
※「きのう」のように、助詞を伴わずに、補語になるものもあります。(諸説あり)
では、ちょっと長い文を見てみましょう。
弟が きのう 難波の公園で かわいい彼女に きれいな花を 贈った。
「難波の 贈った。」「かわいい 贈った。」「きれいな 贈った。」は、無理がありますね…。
「難波の」「かわいい」「きれいな」は、述語「贈った」を修飾(説明)しているのではなく、
直後の名詞を説明しているので、補語とは言えません。
「難波の→公園」「かわいい→彼女」「きれいな→花」
詳しく言うと、下のようになります。
難波(名詞)の 公園(名詞)
かわいい(イ形容詞)彼女(名詞)
きれいな(ナ形容詞)花(名詞)
日本語教師なら、上のように、分類しなければなりませんが、
日本語教師ではない方なら、ざっくりと、これらを1つの名詞として考えてしまいましょう!
弟が きのう 難波の公園で かわいい彼女に きれいな花を 贈った。
1つの名詞 1つの名詞 1つの名詞
「難波の公園で 贈った。」「かわいい彼女に 贈った。」「きれいな花を 贈った。」
これで、「名詞+助詞」になるので、「補語」として成り立ちます!
強引に話を進めてきましたが、要するに、
『日本語は 補語と述語で できている。』
俳句のような、「5・7・5」のリズムで、理解しておきましょう!
では、ここからは「じゃ、どうやっておしえるの?」という点から、書いていきます。
「補語が大事」ということは「助詞が大事」。
「じゃ、単語を教えるときに、一緒に助詞を教えましょう!」という感じです!
結論から言うと、下のようになります。初級っぽく、全部「丁寧形」で書きます。
太字で書いた単語を教えるときに、赤い字で書いた助詞を一緒に教えます。
☆ 名詞の場合
①(~が・は)××× アメリカ人です。
☆ 形容詞(イ形容詞・ナ形容詞)の場合
②(~が・は)××× 大きいです。
③(~は) ~が ほしいです。
④(~が・は)××× 馬鹿です。
⑤(~は) ~が 好きです。
☆ 動詞の場合
⑥(~が・は)××× 寝ます。
⑦(~が・は)~を 食べます。
⑧(~が・は)~へ 行きます。
⑨(~が・は)~に 座ります。
⑩(~が・は)~に ~を 贈ります。
⑪ ~に ~が あります。
なんとなく、言おうとしていることはわかるでしょうか?
例えば、新しく「座ります」という単語を教えるときには「~に 座ります」と教えます。
「~に」を教えず、「座ります」だけ教えると、学習者は「椅子を座ります」とか言ってしまいます。
「助詞を一緒に教えるのは、わかったけど、その助詞はどうやって選ぶの?」
ざっくりと説明します!(かなり雑です!)
☆ 全文共通 ①~⑪
◇(~が・は)の部分は、ほとんどの文に共通しているので、わざわざ単語ごとに教えません。
☆ 名詞
◇ ①名詞「アメリカ人」は「彼は アメリカ人です。」と「主語・述語」だけで、文が成立します。
「目的語」をもたないので、一緒に教える助詞はありません。単独で教えます。
☆ 形容詞(イ形容詞・ナ形容詞)
◇ 形容詞には「目的語」をもつものと持たないものに分かれます。
◆ ②④は「目的語を持たない形容詞」なので、一緒に教える助詞はありません。単独で教えます。
◆ ③⑤は「車がほしい」「ラーメンが好き」のように「目的語」を持つので、「~が」を一緒に教
えます。
※このような目的語を持つ形容詞は、英語では動詞であることが多いです。
例:「ほしい≔want」「すき≔like」「嫌い=hate」
☆ 動詞
◇ 動詞を教えるときには「必須補語を形成している助詞」を一緒に教えます。
補語のなかには、文を構成するために絶対必要な補語「必須補語」と、必ずしも必要ではない補語「副次補語」があります。例を見てみましょう。赤い字は必須補語で、青い字は副次補語です。
例:弟が きのう 公園で 彼女に 花を 贈った。
「贈った」という動詞なら、「誰が 誰に 何を」⇒「弟が・彼女に・花を」の部分が「必須補語」で、それ以外の「きのう・公園で」は「副次補語」です。
よって、「贈ります」という動詞を教えるときには、「~に ~を」を一緒に教えます。
※「弟が」の(~は・が)の部分は、ほとんど文に共通するので、わざわざ一緒に教えません。
◇ ⑥~⑪の動詞の一緒に教える助詞は、下のようになります。
⑥ ××× 寝ます(目的語を持たないので、単独で教える。) ⑦ ~を 食べます
⑧ ~へ 行きます ⑨ ~に 座ります ⑩ ~に ~を 贈ります ⑪ ~に ~が あります
「必須補語」は、雑な説明になってしまいましたが、今は深く考えなくてもいいです。とりあえず、
「単語(特に動詞)を教えるときは、助詞も一緒に教える」と思っていただければ、オッケーです!
以上のように、「助詞」の指導は、初級の重要項目の1つです。
上で書いた「日本語は 補語と述語で できている。」は
「日本語は 助詞と述語で できている。」とも、言えるでしょう!
まとめ
この記事では、「補語」と「助詞の重要性」について、書きました。
まとめると、以下の2点です。
・単語(特に動詞)を教えるときは、助詞を一緒に教える。
私は、初級指導の最重要項目は、下の3つだと思っています。
① 日本語は助詞と述語でできている。⇒述語(文の最後まで)をちゃんと言わせる指導をする。
② 日本語は助詞と述語でできている。⇒助詞をきっちり指導する。
③ 日本語は助詞と述語でできている。
⇒述語がちゃんと言えるように、活用(動詞などの変化)を、しっかり練習する。
要するに、「述語」「助詞」「活用」この3点です!
①・②については、この第3章までに、書きました。
第4章では、重要項目の③の「活用」について書きます。
簡単に日本語の活用(変化)がわかりますので、よければ、続けてお読みください!
第4章【活用について】
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