形態素について、日本語教育能力試験の合格という観点からまとめてみました。
「形態素って、ややこしくてわからない!」という方、参考にしてください。
この記事を最後まで読んでいただけたら、以下のことがご理解いただけます。
・形態素とは?→異形態
・接辞とは? まず簡単に説明
・語幹とは?
・語基とは?→語基と語幹の違い
・自由形態素と拘束形態素とは?
・語彙的形態素(内容形態素)と文法的形態素(機能形態素)とは?
・「自由形態素と拘束形態素」「語彙的形態素(内容形態素)と文法的形態素(機能形態素)」のまとめ
・接辞とは?→接頭辞・接尾辞・派生接辞・屈折接辞 くわしく説明
・まとめ
形態素 ☆☆☆☆★
形態素とは、意味を担う最小の単位で、それ以上分けることができないもののことです。{ }で示されます。
まずは「とにかく小さい単位」だと思ってください。
いきなりですが、難問です。下の例文を形態素で分けてみてください。
例文: 昨日食べたお菓子は とてもおいしかった
正解は 昨日/食べ/た/お/菓子/は/ /とても/おいし/かった/
「食べた」の「た」とか、「お菓子」の「お」とか、意味を担っていないでしょ?と思いますよね。
しかし、これらは「単独で使用して意味を担う」ことはできませんが、それぞれ意味を担っています。
「昨日・食べ・菓子・とても・おいし」…そのままの意味。
「食べた」の「た」…「食べ」という語基についた接辞。「過去」を表す。
「お菓子」の「お」…「菓子」についた接辞。「美化語」(敬語の中の1つ)
「は」…助詞。「主題」を表す。
「おいしかった」の「かった」…「おいし」という語基についた接辞。「過去」を表す。
※「昨日」・お菓子の「菓子」…「単独で使用して意味を持つ」←もちろん形態素。
※お菓子の「お」…「単独で意味を持たないが、菓子につくことで意味を担う」←これも形態素。
また、形態素は、意味を担う最小単位なので、それ以上分解すると、意味を担わなくなります。
例:「菓/子」←「か」だけ、「し」だけでは、意味を担わない。
「綿飴」は形態素に分けると、「綿/飴」となる。「綿」と「飴」はこれ以上分けると意味を担わない。
「文を形態素に分けなさい」とか「この文はいくつの形態素から成り立っているか?」というような問題は、あまり出題されませんので、ひとまず、だいたい分かればいいでしょう。(平成27年試験Ⅰ問題3のAの1問目に「いくつの形態素が付加されているか?」という上の例文より難しい超難問がありましたが…。)
この記事の後半で「自由形態素と拘束形態素」や「語彙的形態素と文法的形態素」について書きます。
それらを理解するために「接辞」「語幹」「語基」について、先に書くことにします。
読み進めると、「形態素」についても、深くご理解いただけます!
まず、ここから「接辞」→「語幹」→「語基」の順に書いていきます。
接辞 ☆☆☆☆★
まず、接辞について、簡単に説明します。
接辞についての詳しい説明は、この記事の後半に書きましたので、こちらをご覧ください。
接辞とは、それ自体では意味内容を持たないが、語基にくっついて文法的機能を担うものです。
(※下の例の赤い字で書いたもの以外が語基です。語基はあとで説明します)
例:お菓子 ご意見 高さ 私たち 大人っぽい 真面目さ 食べる 食べた おいしい おいしかった
赤い字で書いたものが「接辞」です。お菓子の「お」など前につくものを「接頭辞」、高さの「さ」など後ろにつくものは「接尾辞」と言います。
ひとまず、「接辞」の説明はここまでです。次は「語幹」を見てみましょう。
語幹 ☆☆☆★★
語幹とは、用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用しない部分のことです。
◇ 動詞の例
◆ 一段動詞(Ⅱグループ)
食べる(taberu)食べない(tabenai)食べます(tabemasu) 食べた(tabeta)⇒語幹は「食べ(tabe)」
◆ 五段動詞(Ⅰグループ)
飲む(nomu)飲まない(nomanai)飲みます(nomimasu)⇒語幹は「nom」
※「飲んだ」は撥音便化(飲みた→飲んだ)するので、例として挙げません。
◆ カ行変格活用・サ行変格活用(Ⅲグループ)には語幹がありません。
来る(kuru)来ない(konai)来ます(kimasu)来た(kita)
する(suru)しない(shinai)します(shite)した(shita)
※それぞれ「k」「s」が語幹だという見方もありますが、「語幹なし」が一般的な見方です。
◇ 形容詞(イ形容詞)の例
おいしい(oishii) おいしくない(oishikunai) おいしかった(oishikatta)⇒語幹は「おいし(oishi)」
寒い(samui)寒くない(samukunai)寒かった(samukatta)⇒語幹は「さむ(samu)」
◇ 形容動詞(ナ形容詞)の例
真面目だ(majimeda) 真面目じゃない(majimejyanai) 真面目な(majimena)
⇒語幹は「まじめ(majime)」
上のような、用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用しない部分を「語幹」といい、
語幹の後ろの活用している部分を「活用語尾」といいます。
「活用語尾」は「接辞」の一つです。
よって、食べるの「る」おいしかったの「かった」は、活用語尾なので、「接辞」です。
では、続いて「語基」を見てみましょう。
語基 ☆☆★★★
語基とは、語を構成する要素(形態素)のうち、意味的な中核となるものです。
そして、接辞がつく対象となるものです。
強引にまとめると「語基=(接辞がつく対象になる)名詞+用言の語幹」です。
◇ 名詞はそのまま語基。
菓子 話 薬 意見 私 春 男 大人 等
※これらは語基なので、それぞれ接辞がつく対象になります。
お菓子 お話 お薬 ご意見 私たち 春めく 男らしい 大人っぽい
◇ 用言(動詞・形容詞・形容動詞)は語幹が語基。
◆ 動詞…食べる・食べないの「食べ(tabe)」 飲む・飲まないの「nom」
◆ 形容詞…おいしい・おいしくないの「おいし(oishi)」
◆形容動詞…真面目だ・真面目じゃないの「まじめ(majime)」
※これらも接辞がつく対象になります。
食べる 食べない 飲む(nomu)飲まない(nomanai) おいしい おいしくない 真面目さ
強引にまとめましたが、どうでしょうか?
逆に言うと、語基は「接辞がついている語(派生語など)から接辞を取り除いたもの」とも言えます。
「語基と語幹って同じ?」と、よくわからなくなりますが、細かいことは置いておいて、
「語基=(接辞がつく対象になる)名詞+用言の語幹」という理解でいいと思います!
自由形態素と拘束形態素 ☆☆★★★
自由形態素
自由形態素とは、単独で語となることができる形態素のことです。
独立形態素ともいいますが、自由形態素のほうがよく使われます。
例:昨日 菓子 山 机 電話 カメラ とても ゆっくり
※「綿飴」は形態素で分けると「綿/飴」となります。「綿飴」が自由形態素ではなく、「綿」と「飴」
という2つの自由形態素で成り立っている語と言えます。
ここで、「食べる」や「おいしい」などが自由形態素なのか?ということになります。
結論から言うと、自由形態素ではありません。
形態素に分けると、「食べ/る」「おいし/い」となるからです。
「食べ」「おいし」などの用言の語幹は、自由形態素っぽいですが、「食べ」は、意味内容を表す形態素ですが、「単独で語となる形態素」ではありません。
「おいし」も同様に「単独で語となる形態素」ではありません。
「食べ」「る」「おいし」「い」は、全部、下に書く「拘束形態素」です。
拘束形態素
拘束形態素とは、単独で語となることができない形態素のことです。
束縛形態素ともいいますが、拘束形態素のほうがよく使われます。
例:お茶の「お」 高さの「さ」等の接辞 「は」「で」「に」等の助詞。「ね」「よ」等の終助詞。
また、「食べ/る」の「食べ」「る」、「おいし/い」の「おいし」「い」も、それぞれ、単独で語となることができないので、全部、拘束形態素です。
語彙的形態素(内容形態素)と文法的形態素(機能形態素) ☆☆★★★
語彙的形態素/内容形態素
語彙的形態素とは、語彙的な意味内容を持つ形態素のことです。
「内容形態素」とも言い、これはどちらもよく使われるので、どちらも覚えたほうがいいでしょう。
語彙的形態素は、上に書いた自由形態素に似ています。
いろいろややこしいことは抜きにして、簡潔に下のように理解していいでしょう!
「語彙的形態素(内容形態素)=自由形態素+用言の語幹」
例:自由形態素…昨日 菓子 山 机 電話 カメラ とても ゆっくり 等
用言の語幹…「食べ/る」の「食べ」、「おいし/い」の「おいし」 等
「食べ/る」の「食べ」、「おいし/い」の「おいし」等の用言の語幹も、語彙的形態素です。
これらは、単語で語となることはできませんが、「語彙的な意味内容を持っている」からです。
文法的形態素/機能形態素
文法的形態素とは、自体で語彙的な意味内容を持たないが、文法的な意味をもつ形態素のことです。
「機能形態素」とも言い、これはどちらもよく使われるので、どちらも覚えたほうがいいでしょう。
文法的形態素は、上に書いた拘束形態素に似ています。
これまた、ややこしいことは抜きにして、簡潔に下のように理解していいでしょう!
「文法的形態素(機能形態素)=拘束形態素-用言の語幹」
例:お茶の「お」 高さの「さ」等の接辞 「は」「で」「に」等の助詞。「ね」「よ」等の終助詞。
食べるの「る」 おいしいの「い」←これらも接辞
×食べるの「食べ」×おいしいの「おいし」⇐ 語彙的形態素
「食べ/る」の「食べ」、「おいし/い」の「おいし」等の用言の語幹は、語彙的な意味内容を持つので、文法的形態素ではなく、語彙的形態素です。
「自由形態素と拘束形態素」「語彙的形態素と文法的形態素」のまとめ ☆☆☆★★
自由形態素と語彙的形態素(内容形態素)は似ていて、拘束形態素と文法的形態素(機能形態素)は似ています。
まとめると、下のようになります。
◇ 山・いつも 等…自由形態素で語彙的形態素
◇ 接辞:お茶の「お」食べるの「る」 助詞・終助詞 等…拘束形態素で文法的形態素
◇ 用言の語幹:食べるの「食べ」おいしいの「おいし」等…拘束形態素・語彙的形態素
※要するに「用言の語幹…拘束形態素・語彙的形態素」だけ、注意です!
接辞 ☆☆☆☆★
接辞とは、それ自体では意味内容を持たないが、語基にくっついて文法的機能を担うものです。
(※下の例の赤い字で書いたもの以外が語基です。語基についてはこの記事の少し上に説明があります。)
例:お菓子 ご意見 未完成 高さ 私たち 男らしい 大人っぽい 真面目さ
食べるの「る」 食べたの「た」 おいしいの「い」 おいしかったの「かった」
お菓子の「お」高さの「さ」など、赤い字で書いたものが「接辞」です。
食べるの「る」おいしいの「い」等、用言(動詞・形容詞・形容動詞)の「活用語尾」も接辞です。
お菓子の「お」など前につくものを「接頭辞」、高さの「さ」など後ろにつくものを「接尾辞」と言います。
また、接辞は「派生接辞」と「屈折接辞」に分けられます。
結論から言うと、下のようになります。
「派生接辞」…お菓子・ご意見・高さ・私たち・男らしい・大人っぽい・真面目さ
「屈折接辞」…食べるの「る」 食べたの「た」 おいしいの「い」 おいしかったの「かった」
派生接辞 ☆☆★★★
派生接辞とは、品詞を変えるなど、もともとある語から別の語を作り出す働きがある接辞のことです。
例:お菓子・ご意見・高さ・私たち・男らしい・大人っぽい・真面目さ
例えば、「大人っぽい」は「大人」という名詞に、派生接辞「っぽい」がついて、形容詞(イ形容詞)となり、「大人のような感じ」という意味の言葉になっています。
そして、派生接辞がついてできた語を「派生語」といいます。上の例は全部、「派生語」です。
接頭辞がついた派生語は、基本的に品詞は変わりませんが、中には、※変わるものもあります。
変わる場合は、ほとんど形容動詞にかわります。
例:茶(名詞)→お茶(名詞) 意見(名詞)→ご意見(名詞)※関係(名詞)→無関係な(形容動詞)
接尾辞がついた派生語は、その接尾辞の性質によって品詞がきまります。、
名詞を作る 高さ 楽しみ 耐熱性 山田さん 等
動詞を作る 春めく ほしがる メモる 大人ぶる 等
形容詞を作る 大人っぽい 男らしい 四角い 等
形容動詞を作る 効率的 悲しげ おいしそう 等
屈折接辞 ☆☆★★★
屈折接辞とは、テンス(時制)などの文法的機能を表す働きがある接辞のことです。
つまり、用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用語尾の「る」や「た」等のことです。
例:食べるの「る」 食べないの「ない」 食べたの「た」 食べようの「よう」
おいしいの「い」 おいしかったの「かった」 等
屈折接辞は、1つの語を異なる複数の形にするものなので、別の語を作るものではありません。
基本的に品詞も変わりません。
まとめ
「形態素」「語基」「接辞」などは、テキストを読んでもややこしくて、勉強する気をなくしてしまいますね。
ですが、ざっくりとわかってしまえば、そんなに難しく感じなくなります。
この記事で、「以前よりも理解できた!」と思っていただければ、うれしく思います。
この記事の内容が理解できれば、覚えるのは下のような感じでいいと思います!
・語幹…用言の活用しない部分 ・活用する部分は活用語尾 ・活用語尾は接辞の1つ
・語基…名詞+用言の語幹
・「自由形態素と拘束形態素」「語彙的形態素(内容形態素)と文法的形態素(機能形態素)」
◇ 山・いつも 等…自由形態素で語彙的形態素
◇ 接辞:お茶の「お」食べるの「る」 助詞・終助詞 等…拘束形態素で文法的形態素
◇ 用言の語幹:食べるの「食べ」おいしいの「おいし」等…拘束形態素・語彙的形態素
※ 用言の語幹→拘束形態素・語彙的形態素に注意!
・接辞→・接頭辞・接尾辞 ・派生接辞 お菓子の「お」等 ・屈折接辞 食べるの「る」等
ご質問、ご相談等、お気軽にコメントをどうぞ。