変音現象について(連濁・半濁音化・音便・転音・音韻添加・音韻脱落・音韻融合・連声)

変音現象について、日本語教育能力試験の合格という観点からまとめてみました。
「変音現象って、どのくらい覚えてたらいいの?」という方、変音現象は多数ありますが、この記事の内容で十分だと思います!
この記事を最後まで読んでいただけたら、以下のことがご理解いただけます。

変音現象  ☆☆☆☆★

変音現象とは、合成語が作られるとき、音に変化が起こる現象のことです。

例:腕+時計→「腕時計」。「とけい」が「どけい」になる「連濁」という変音現象が起きている。

変音現象はこの「連濁」の他にも、いろいろありますが、下のものを覚えれば十分です!

「連濁」「半濁音化」「音便」「転音」「音韻添加」「音韻脱落」「音韻融合」「連声」

「音位転換」は変音現象に含まれないという見方が一般的ですが、大きい問題ではないので、一緒に書いておきます。

全ては「そう言ったほうが楽だから、言いやすいから」起きる現象だと、思っていいでしょう。

数は多いですが、1つ1つは簡単ですので、ご安心ください!

連濁  ☆☆☆☆☆

連濁とは、2つの語が結びつくとき、後ろの語の語頭の清音が濁音に変化する現象のことです。
つまり、後ろの語の語頭の字に濁点「゛」がつくということです。

カ行→ガ行 紙(かみ)→手紙(てみ) 国(くに)→国々(くにに) くらい→5時らい
サ行→ザ行 寿司(すし)→回転寿司(かいてんし) 空(そら)→青空(あおら)
タ行→ダ行 棚(たな)→本棚(ほんな) 血(ち)→鼻血(はな
ハ行→バ行 人(ひと)→人々(ひとと) 太る(ふとる)→正月太り(しょうがつとり)

検定試験では、「連濁がおこりにくい場合」がよく出題されます。よく出題されるのは下の3つです。
また、それぞれの「例外」もよく出題されるので、一緒に書いておきます。

① 連濁が起こるのは基本的に和語で、外来語は起こりにくい。(外来語はカタカナ語のほかに漢語も含む)

例:リゾート+ホテル→「リゾートテル」 初級+クラス…「初級ラス」
  市内+観光→「市内観光(しないんこう)」

◆ 例外
・漢語…日常化した語は連濁を起こすものがある。
 例:株式会社(かぶしきがいしゃ) 夫婦喧嘩(ふうふげんか)等
・カタカナ語…古い時期にポルトガル語などから入ってきた、外来語と意識されにくい語では連濁が
       起こることがある。
 例:「合羽(かっぱ)」→「雨合羽(あまがっぱ)」 「歌留多(かるた)」→「いろは歌留多(がるた)」

② 前後の要素が並列関係の語は連濁がおこりにくい。

例:「草」と「木(き)」→「草木(くさ)」「好き」と「嫌い」→「好き嫌い(すきらい)」
  「赤白(あかろ)」「目鼻(めな)」「田畑(たた)」等

では、みなさん「尾鰭」←この字を読んでみて下さい。
「おれ」と読みましたか。「おれ」と読みましたか。

⇒どちらも正解です。

「尾」と「鰭(ひれ)」という並列関係なら、「尾鰭(おれ)」。
「尾の鰭」という前後の要素が修飾関係(統語関係)なら「尾鰭(おれ)」と読みます。


並列関係「山と川」→「山川(やまわ)」統語関係「山を流れる川」→「山川(やまわ)」も同じです。

◆例外
並列関係であっても、「草花(くさばな)」等、連濁するものもあります。

後部要素の語に濁音が含まれている場合、連濁がおこりにくい。この③を「ライマンの法則」といいます。

例えば、「風(かぜ)」は語の中に、もともと濁音「ぜ」が含まれているので、「がぜ」とならず、連濁がおこりません。

例:春風(はるぜ) 海風(うみぜ) 夏風邪(なつぜ)
  「とかげ」→「おおかげ」×おおどかげ 「焦げ(こげ)」→「黒げ」×くろごげ

◆ 例外
ライマンの法則の例外は「縄梯子(なわばしご)」が代表的。
「はしご」はもともと濁音「ご」が含まれているが、「なわばしご」と連濁が起きている。

べンジャミン・スミス・ライマン(1835~1920)
アメリカの鉱山学者で、※お雇い外国人の1人として日本に招かれ、日本語研究にも携わった。いろいろな研究をしたが、「ライマンの法則」が特に知られている。日本名は来曼。
※お雇い外国人…幕末から明治にかけて、日本政府が欧米の技術・学問を導入するために雇った外国人のこと

上の3つをまとめます。きっちり覚えておきましょう!

① 外来語(カタカナ語+漢語)は連濁がおこりにくい。
  例:リゾートホテル 市内観光 ◆ 例外:株式会社 雨合羽
② 前後の要素が並列関係である場合、連濁がおこりにくい。
  例:草木(くさき) ◆ 例外:草花(くさばな)
③ 後部要素に濁音が含まれていると、連濁がおこりにくい。「ライマンの法則」
  例:春風(はるかぜ) ◆ 例外:縄梯子(なわばしご)

半濁音化  ☆☆★★★

半濁音化とは、後部要素の語頭の「ハ・ヒャ行音」が「半濁音(パ・ピャ行音)」に変わる現象のことです。
半濁音化するときに、促音「っ」を追加したり、直前の音が促音化したりします。

例:喧嘩+早い→「けんかっぱやい」 ひき+はがす→「ひっぱがす」 酔う+払う→「よっぱらう」
  八+百→「八百(はっぴゃく)」 一+票→「一票(いっぴょう)」

音便  ☆☆☆☆☆

音便とは、発音の便宜のために、単語の中の1音が別の音に変わる現象のことです。
促音便「っ」、撥音便「ん」、イ音便、ウ音便などがあります。

撥音便 つきさく→つざく 踏みつける→踏づける
促音便 追い払う→追っ払う(おぱらう) 差し引く→さぴく
イ音便 埼玉(さきたま)→埼玉(さたま) ござります→ござます
ウ音便 若くて→若うて(わこて) 思って→思うて(おもて) お早く→お早う(おはよ

そして、音便は、五段動詞(Ⅰグループ)の活用形「テ形」「タ形」等にも見られます。
(※変音現象とは合成語を作るときの音の変化のことで、動詞の活用〔単語内の変化〕は変音現象に含まれないという見方もありますが、一緒に書いておきます。)

「音便」ときたら、動詞の活用のことを問われることが多いので、まず、こちらを先に思い浮かべてください。
日本語教育では、学習者に「買います(マス形)」から「買って(テ形)」にする方法で教えるのが一般的です。

◇ 促音便「っ」…「ます」の前が「い・ち・り」の場合
  例:買います→買て 立ちます→立て 帰ります→帰
◇ 撥音便「ん」…「ます」の前が「み・び・に」の場合
  例:読みます→読で 遊びます→遊で 死にます→死
◇ イ音便…「ます」の前が「き・ぎ」の場合
  例:書きます→書て 泳ぎます→泳

※「ます」の前が「し」の場合、音便化しない。例:話します→話して 貸します→貸して 
※「行きます→行って」は例外。上のルールでは「行いて」になるが、特別に「行って」になる。
※「問います/問う→問うて」「請います/請う→請うて」も例外。これらは「ウ音便」。

動詞の活用の音便は、よく出題されますので、整理しておきましょう!

転音/母音交替  ☆☆☆★★

転音とは、2つの要素が結びつくとき、前の要素の最後の母音が交替する現象のことです。
「母音交替」とも言います。

例:酒(sake)+屋(ya)→「酒屋(sakaya)」 木(ki)+陰(kage)→「木陰(kokage)」
  雨傘(amagasa)  風車(kazaguruma) 船乗り(funanori) 木立(kodachi)  火影(hokage)


「雨傘(amagasa)」「風車(kazaguruma)」などは、転音と連濁が起きていますね。

音韻添加  ☆☆☆★★

音韻添加とは、もともとなかった音・音素が新しく加わる現象のことです。
下のパターン1・2どちらも音韻添加です。

◇ パターン1 音(撥音・促音・引く音)が加わる。
  例:真(ま)+中(なか)→真ん中(まなか) 真(ま)+黒(くろ)→真っ黒(まくろ)
    詩(し)+歌(か)→詩歌(しか)
◇ パターン2 後ろの要素の前に、子音が加わる。
  例:小(ko)+雨(ame)→小雨(kosame) 真(ma)+青(ao)→真っ青(massao)(まっさお)

真っ青(まっさお)は、パターン1・2どちらも現われていますね。

音韻脱落  ☆☆☆★★

音韻脱落とは、2つの要素が結びつくとき、音・音素の1部がなくなる現象のことです。

例:河(kawa)+原(hara)→河原かわら(kawahara) 荒(ara)+磯(iso)→荒磯ありそ(araiso)
  手洗い(tearai)→たらい(tearai)

「たらいって、あのたらい?」⇒そうです。あれです。
「手洗い」がなまって、「たらい」になりました。「手洗い」というのは、もともと神社の手や口を清める場所の名前だったそうです。「みたらし団子」は、もともと神社の境内で売っていた串団子が名物になったもので、漢字で書くと「御手洗団子」だそうです。
みなさんの知り合いに「御手洗(みたらい)さん」という方は、いらっしゃいませんか?
なんで「みたらい」と読むか、私も新発見でした。由緒正しきこの苗字を「おてあらいさん」とか言っていた自分が恥ずかしいです。
音韻融合  ☆☆☆★★

音韻融合とは、連続する音が融合して、第三の音に変わる現象のことです。

狩人(かりうど)→「かりゅうど」 仲人(なかびと)→「なこうど」 若人(わかびと)→「わこうど」
きうり→「きゅうり」 けふ→「きょう」 てふ→「ちょう」

これに関しては、定義は深く考えず、上のようなものが「音韻融合」だって覚えたほうが早いですね。
要するに「言いやすいように変わった」感じです。

「てふ→ちょう」に至っては、「ふ」を「う」と読むということを考慮しても、理解しがたいですが、
気にしないでおきましょう!

連声(れんじょう)  ☆☆☆★★

連声とは、前の要素の/ン//ツ/の次にくる後の要素のア・ヤ・ワ行音がマ・ナ・タ行音に変化する現象のことです。漢語の熟語に見られます。

例:観(かん)+音(おん)→観音(かんん) 因(いん)+縁(えん)→因縁(いんん)
  三(さん)+位(い)→三位(さん)   雪(せつ)+隠(いん)→雪隠(せっん)

「もうなんとなくわかったから、大丈夫!」という方は、ここまででオッケーです。
「反応」と聞いて、「観音と同じだから連声!」とわかる人は大丈夫です!

詳しく知りたい方は、下もお読みください。

正確に言うと、連声とは、

◇ 平安時代末期から室町時代まであった変音現象。
◇ 前の要素が子音「n・m・t」で終わる漢字のあとにくる「ア・ヤ・ワ行音」が、
 「マ・ナ・タ行音」に変化する現象。

これだけではわからないので、以下、説明です。

◇ 前提
・平安時代から室町時代にかけての日本語には、音読みが「-n・-m・-t」の子音で終わるものがあった。
・現代の/ん/という音は、当時「n」と「m」という別の音だった。
(※「n(舌内撥音)」「m(唇内撥音)」「t(舌内入声音)」ですが、覚えなくてもいいです。)

◇ 連声は下の3パターン
①「n音」にア・ヤ・ワ行音が続く場合、ナ行音に変わる。
  例:銀(ぎん)+杏(あん)→銀杏(ぎんん) 天(てん)+皇(おう)→天皇(てんう)
    因縁(いんん)観音(かんん)反応(はんう)

②「m音」にア・ヤ・ワ行音が続く場合、マ行音に変わる。ヤ行がマ行音に変わる場合、拗音になった。
  例:三(さん)+位(い)→三位(さん) 陰(おん)+陽(よう)→陰陽(おんみょう)

③「t音」にア・ヤ・ワ行音が続く場合、タ行音に変わる。
  例:雪(せつ)+隠(ちん)→雪隠(せっん)
    屈(くつ)+惑(わく)→屈惑(くっく) ※現代は「屈託」と書く。

◇ その後、室町時代の途中には、「n」と「m」の区別が失われ、マ行音に変わるものはほとんど見られなくなりました。(はっきりとは言えませんが「m」がなくなった感じなのでしょう)

◇ さらにその後、江戸時代以降には「n」と「m」が撥音/ん/、「t」は/チ/または/ツ/で発音されるようになり、連声はほとんど見られなくなったそうです。

室町時代には、漢語内のみでなく、和語(特に助詞の部分)にも連声が見られたそうです。
例:今日は(こんにちは)→「こんにった」 念仏を(ねんぶつを)→「ねんぶっと」
この現象は、現在では能や狂言などの古典芸能や、ごく一部の地域方言にしか残されていないようです。

少し複雑になってしまいましたが、原点に戻って、もう1度書きます。

連声は「観音・三位・雪隠」などと覚えて、「反応」ときいて、「観音と同じだから連声!」とわかれば、大丈夫です!

音韻転換  ☆☆☆★★

音位転換とは、単語内の音と音が入れ替わる現象です。

(※変音現象とは、合成語が作られるときの音の変化のことで、単語内の変化の音位転換は、変音現象には含まれないという見方が一般的ですが、大きい問題ではないので、一緒に書いておきます。)

例:新しい…「あらたし」→「あたらしい」 秋葉原…「あきばはら」→「あきはばら」
  舌鼓…「したつづみ」→「したづつみ」 山茶花…「さんざか」→さざんか

「新しい」も音位転換なんですね。言われてみれば、「新たな」は「あらたな」と読みますね。
また、パソコンで「したつづみ」「したづつみ」どちらで打っても「舌鼓」と変換されることにもびっくりしました!「新しい」「秋葉原」「山茶花」も同様です。一度、試してみてください!

まとめ  ☆☆☆★★

まとめも兼ねて、あと少し、付け加えておきます。

◇「変音現象はなぜ起きる?」→「楽だから」「口の負担が軽いから」
  例:酒(さけ)→屋(や)→酒屋(さかや) ※エ段よりア段のほうが口の負担が軽い
◇ 変音現象は2つ以上、同時に起こることもある。
  例:転音連濁 雨(ame)+傘(kasa)→雨傘(amagasa)
    促音半濁音化 追い(oi)+払う(harau)→追っ払う(opparau)
◇ 変音現象はただの現象なので、「正しい」「正しくない」は関係ない。
  例:体育(たいいく)を「たいく」と読むのは、間違いだが、これも変音現象(音韻脱落)。

この記事の内容が理解できれば、覚えるのは、下のような感じでいいと思います!

・変音現象→連濁・半濁音化・音便・転音(母音交替)・音韻添加・音韻脱落・音韻融合・連声
      ※ついでに「音位転換」も
・連濁→連濁がおこりにくい場合
      ① 外来語  例:リゾートホテル 市内観光 例外:株式会社 雨合羽
    ② 並列関係 例:草木 例外:草花
    ③ もともと濁音がある(ライマンの法則) 例:春風 例外:縄梯子
・半濁音化 けんかっぱやい おっぱらう
・音便→撥音便・促音便・イ音便・ウ音便 ※五段動詞(Ⅰグループ)のテ形等
・転音(母音交替) 酒屋 木陰
・音韻添加     真っ白 小雨
・音韻脱落     河原 荒磯
・音韻融合     狩人 仲人
・連声       観音 三位 雪隠
・音位転換     新しい 舌鼓 ※変音現象には含まれないという見方が一般的

1つ1つは難しくないのですが、「どれがどれか?」というのを、忘れてしまいますよね。

「音韻脱落」などは、言葉から思い出せるのですが、「連声」や「転音」などは、忘れやすいので、
私は「観音連声」とか「酒屋転音」とかいうふうに覚えています!

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