国際音声記号(IPA)について、日本語教育能力試験の合格という観点からまとめてみました。
「音声記号…。嫌だ~。ややこしいから、後回し!」と思っている方、参考にしてみてください。
国際音声記号(IPA)についての、全体的な流れは以下のようになります。
この記事は【第2章 サ行・タ行・ナ行・ハ行】です。
第1章をご覧になっていない方は、ぜひ、第1章からご覧ください。
だいたいのことがわかっている方は、各章最後の「まとめ」だけ、見ていただいてもいいと思います!
第1章 母音(ア行)子音(カ・ガ行)ガ行鼻濁音について
第2章 サ行・タ行・ナ行・ハ行
第3章 マ行・ヤ行・ラ行・ワ行・半母音
第4章 特殊音(撥音・促音・引く音)・日本語にない音声の音声記号
この記事は【第2章 サ行・タ行・ナ行・ハ行】です。
最後まで読んでいただいたら、以下のことがご理解いただけます。
まず、1章で書いた「音声記号を勉強する上でのコツ」を書きます。
◇ 日本語で使用する音を「ア行」→「カ行」→「サ行」の順に整理していく。
◇ 例えば「カ行」を勉強するときに「ガ行」「キャ行」「ギャ行」を一緒に理解する。
◇ 各行で出題されやすい周辺知識を知る。
◇ 余裕があれば、日本語にない音声の音声記号も少し覚える。[f][v][l][r]など。
この第2章もこの流れで書いていきます。では、サ行からスタートです!
サ行
サ行は /サ シ ス セ ソ/ です。
音声記号は、サ[sa]シ[ɕi]ス[sɯ]セ[se]ソ[so]です。
「シ[ɕi]←何ですか これ?」⇐あとで説明します!
では、少し第1章を思い出しましょう!
母音…肺から出る呼気を妨げずに発する音声
子音…肺から出る呼気を妨げて発する音声
子音は「①声帯振動の有無」「②調音点」「③調音法」の3つで分類される。
①「声帯振動の有無」…声帯が振動するかしないか。【有声音・無声音】
②「調音点」…どこで呼気を妨げているか。妨げる場所。
日本語を調音する際の「調音点」主に下の7つ。※全部「音」を省きます。例:両唇音
「両唇・歯茎・歯茎硬口蓋・硬口蓋・軟口蓋・声門・口蓋垂」
③「調音法」…呼気を妨げる方法。どのように妨げるか。
日本語を調音する際の「調音法」は、主に下の6つ。
「破裂音(閉鎖音ともいう)・摩擦音・破擦音・鼻音・接近音・弾き音」
では、まず、サ行 /サ スセソ/ の子音は[s]です。
[s]…「無声 歯茎 摩擦音」

① 声帯振動の有無…【有声音・無声音】
カサタパハ行(キャ行やシャ行なども)の子音は無声音。つまり、濁点「゛」がつけられるものが「無声音」で、それ以外の子音は全部「有声音」です。(※母音も有声)
よって、サ行の子音[s]は「無声音」です。
「カサタパハ行(キャ行やシャ行なども)の子音は無声音」これは早めに覚えることをお勧めします。
「母音の無声化」等、いろいろなところで出てくる言葉です。
② 調音点
「両唇・歯茎・歯茎硬口蓋・硬口蓋・軟口蓋・声門・口蓋垂」のうちの「歯茎」です。
「歯茎」とは歯茎のことです。上の口腔断面図のように、舌先を「歯茎」(歯の裏と歯茎の境目ぐらい)に向かって盛り上げて、肺から出る呼気を妨げています。
③ 調音法
「破裂音(閉鎖音ともいう)・摩擦音・破擦音・鼻音・接近音・弾き音」のうちの「摩擦音」です。
摩擦音とは、口腔の一部を狭めて、そこに呼気を通して、摩擦を起こすことで出す音声のことです。
「サ・ス・セ・ソ」と言ってみると、調音点である「歯茎」のところで擦れる感じがありますね。
そのように摩擦させて出す音が「摩擦音」です。
他に調音点は違いますが、/ヒ/や/フ/なども「摩擦音」なので、感覚をつかんでみてください!
※子音[k]の調音法「破裂音」は、閉鎖を作る音でなので、口腔断面図の舌が上にくっつきますが、「摩擦音」は閉鎖を作る音ではないので、舌は上にくっつきません。
では、/シ/[ɕi]について、説明します。
第1章のカ行をご覧いただいた方なら、うっすらわかると思います。
下の説明でわかりにくい方は、☞ 第1章のカ行 のところをご覧ください!
イ段(キ・シ・チ…)は特別で「硬口蓋化」します。
硬口蓋化とは、調音するときに「舌の盛り上がりが硬口蓋に寄る」ということです。
下の口腔断面図[ɕ]をご覧ください。舌の盛り上がりが[s]に比べて、硬口蓋に寄っています。

カ行では、音声記号に[ʲ]が入るだけで、調音点は変わりませんでしたが、
[ɕ]は「硬口蓋化」によって、調音点が変わり、「歯茎硬口蓋」になります。
[ɕ]…「無声 歯茎硬口蓋 摩擦音」
歯茎硬口蓋とは、「歯茎」と「硬口蓋」の間ぐらいのことです。
上の[ɕ]の口腔断面図を見ると、舌先が少し上がって、歯茎硬口蓋に近づいていることがわかります。
一気に書くとややこしいので、第1章のカ行のところでは、書きませんでしたが、ここで書いておきます。
これで、サ行はオッケーです。
ですが、ここで終わったらもったいないです。シャ行も一緒に覚えましょう!
/シ/[ɕi]は音声記号では、「シャ行」のグループに入ります。
/シ/ だけで覚えず、/シャ シ シュ シェ ショ/で覚えましょう!
シャ[ɕa]シ[ɕi]シュ[ɕɯ]シェ[ɕe]ショ[ɕo]
また、 /スィ/ の音声記号は[si]で、サ行[s]のグループに入るので、一緒に覚えましょう!
サ[sa]スィ[si]ス[sɯ]セ[se]ソ[so]
サ行をまとめると、下のようになります。
サ行 「無声 歯茎 摩擦音」 /サ スィ ス セ ソ / [sa] [si] [sɯ] [se] [so]
シャ行 「無声 歯茎硬口蓋 摩擦音」 /シャ シ シュ シェ ショ/ [ɕa] [ɕi] [ɕɯ] [ɕe] [ɕo]
ザ行
ザ行は /ザ ジ ズ ゼ ゾ/ です。
音声記号は、ザ[za]ジ[ʑi]ズ[zɯ]ゼ[ze]ゾ[zo]です。
/ザ ズゼゾ/の子音は[z]、/ジ/ の子音は[ʑ]です。
/ジ/[ʑi]も、/シ/[ɕi]と同様に、「硬口蓋化」します。(※イ段は硬口蓋化する。)
[z][ʑ]は、[s][ɕ]が、有声音(声道振動あり)になるだけです。
有声音になるだけで、調音点と調音法は変わらないため、口腔断面図は[s][ɕ]と同じです。
[z]…「有声 歯茎 摩擦音」
[ʑ]…「有声 歯茎硬口蓋 摩擦音」
これも、/ジ/[ʑi]だけ覚えたらもったないです。
/ジ/[ʑi]は、音声記号では、ジャ行のグループに含まれます。一緒に覚えましょう!
ジャ[ʑa]ジ[ʑi]ジュ[ʑɯ]ジェ[ʑe]ジョ[ʑo]
また、/ズィ/の音声記号は[zi]で、ザ行[z]のグループに入るので、一緒に覚えましょう!
ザ[za]ズィ[zi]ズ[zɯ]ゼ[ze]ゾ[zo]
サ行をまとめると、下のようになります。
ザ行(母音間) 「有声 歯茎 摩擦音」 /ザ ズィ ズ ゼ ゾ/ [za] [zi] [zɯ] [ze] [zo]
ザ行(母音間以外) 「有声 歯茎 破擦音」 /ザ ズィ ズ ゼ ゾ/ [dza][dzi][dzɯ][dze][dzo]
ジャ行(母音間) 「有声 歯茎硬口蓋 摩擦音」/ジャ ジ ジュ ジェ ジョ/ [ʑa] [ʑi] [ʑɯ] [ʑe] [ʑo]
ジャ行(母音間以外)「有声 歯茎硬口蓋 破擦音」/ジャジジュジェジョ/[dʑa][dʑi][dʑɯ][dʑe][dʑo]
タ行(ダ行)
ここからはちょっとスピードアップします!
タ行
タ行は/タ チ ツ テ ト/。音声記号はタ[ta]チ[tɕi]ツ[tsɯ]テ[te]ト[to]です。
タ行は、イ段の硬口蓋化 /チ/[tɕi]の他に、/ツ/[tsɯ]も注意しましょう!
まず、/タ テト/の子音は[t]です。
[t]…「無声 歯茎 破裂音」

① 声帯振動の有無…【有声音・無声音】
カサタパハ行(キャ行やシャ行なども)の子音は無声音で、それ以外は有声音です。
よって、タ行の子音[t]は「無声音」です。
② 調音点
「両唇・歯茎・歯茎硬口蓋・硬口蓋・軟口蓋・声門・口蓋垂」のうちの「歯茎」です。
サ行の子音[s]と同じです。
上の口腔断面図のように、舌先が歯茎に向かって盛り上がっています。
③ 調音法
「破裂音(閉鎖音ともいう)・摩擦音・破擦音・鼻音・接近音・弾き音」のうちの「破裂音(閉鎖音)」です。
調音点は違いますが、カ行の子音[k]と同じです。
[t]なら、調音点「歯茎」で一時的に呼気の通り道を閉鎖し、それを破裂させて発声します。
※破裂音は、一時的に呼気の通り道を閉鎖するので、口腔断面図は、舌が口腔の上にくっついた図になります。(他に破擦音と鼻音もくっつきます。)
次は /チ/[tɕi]です。/チ/ の子音は[tɕ]です。
これもイ段で、シ[ɕi]と同様に「硬口蓋化」し、調音点が「歯茎硬口蓋」となります。
また、それだけでなく、調音法が「破擦音」になります。
[tɕ]は、調音点と調音法どちらもタ行[t]と異なるので、検定試験でよく出題される音です。
/タテト/の子音[t]と比較すると、下のようになります。
[t]… 「無声 歯茎 破裂音」
[tɕ]…「無声 歯茎硬口蓋 破擦音」

※「破擦音」も「破裂音」と同様に、一時的に呼気の通り道を閉鎖するので、口腔断面図は舌が上につきます。
では、次は /ツ/[tsɯ] です。/ツ/ の子音は[ts]です。
/タテト/の子音[t]の調音法が「破擦音」になるだけです。
[t]… 「無声 歯茎 破裂音」
[ts]…「無声 歯茎 破擦音」
※[ts]は「破裂音」なので、[ts]の口腔断面図は[t]の断面図の舌が上についたものになります。
これらも、/チ/ /ツ/だけで覚えるともったいないです。
/チ/は「チャ行」のグループ、/ツ/は「ツァ行」のグループに入ります。
また、/ティ/[ti]と/トゥ/[tu]は子音[t]のグループに入ります。
一緒に覚えてしまいましょう!
タ行 タ[ta]ティ[ti]トゥ[tɯ]テ[te] ト[to]
チャ行 チャ[tɕa]チ[tɕi]チュ[tɕɯ]チェ[tɕe]チョ[tɕo]
ツァ行 ツァ[tsa]ツィ[tsi]ツ[tsɯ]ツェ[tse]ツォ[tso]
「チ」で覚えるのを、「チャ チ チュ チェ チョ」と覚えるだけです。
このように覚えると、かえって覚えやすくなりますし、いろいろな問題(試験Ⅱの大問3等)に対応できます。
「 /タ テ ト/で覚えて、/チ/ で覚えて、/ツ/ で覚える…」という勉強の仕方もあるかと思います。
ですが、/タ チ ツ テ ト/ で計5音なら、/タ チ ツ テ ト/ /チャ チ チュ チェ チョ//ツァ ツィ ツ ツェ ツォ/と、1.1倍の労力で、3倍の計15音覚えたほうが得です!
ダ行
ダ行は /ダ デド/ です。音声記号はダ[da]デ[de]ド[do]です。
※/ヂ/と/ヅ/は/ジ/と/ズ/と同じなので書きません。また、ヂャ行もジャ行と同じなので書きません。
[d]は簡単です。[t]が有声音(声道振動あり)になるだけです。
有声音になるだけで、調音点と調音法は変わらないため、口腔断面図は[t]と同じです。
[d]…「有声 歯茎 破裂音」
また、/ディ・ドゥ/の音声記号は[di][dɯ]で、ダ行[d]のグループに入るので、一緒に覚えましょう!
ダ[da]ディ[di]ドゥ[dɯ]デ[de]ド[do]
タ行・ダ行をまとめると、下のようになります。
タ行[t]…「無声 歯茎 破裂音」 /タ ティ トゥ テ ト/ [ta][ti][tɯ][te][to]
チャ行[tɕ]…「無声 歯茎硬口蓋破擦音」/チャ チ チュ チェ チョ/ [tɕa] [tɕi] [tɕɯ] [tɕe] [tɕo]
ツァ[ts]…「無声 歯茎 破擦音」 /ツァ ツィ ツ ツェ ツォ/ [tsa] [tsi] [tsɯ] [tse] [tso]
※念のため /タチツテト/ の音声記号…タ[ta]チ[tɕi]ツ[tsɯ]テ[te]ト[to]
ダ行[d]…「有声 歯茎 破裂音」 /ダ ディ ドゥ デ ド/ [da][di][dɯ][de][do]
ナ行
ナ行は/ナ ニ ヌ ネ ノ/。音声記号はナ[na]二[ɲi]ヌ[nɯ]ネ[ne]ノ[no]です。
/ナ ヌネノ/の子音は[n]、/ニ/の子音は[ɲ]です。
注意するのは、イ段の 二[ɲi]だけです。あとで説明します。
まず、/ナ ヌネノ/の子音は[n]です。
[n]…「有声 歯茎 鼻音」

① 声帯振動の有無…【有声音・無声音】
カサタパハ行(キャ行やシャ行なども)の子音、つまり濁点「゛」がつけられるのは無声音で、それ以外は有声音です。/ナ/には濁点「゛」がつけられません。
よって[n]は「有声音」です。
②「調音点」
「両唇・歯茎・歯茎硬口蓋・硬口蓋・軟口蓋・声門・口蓋垂」のうちの「歯茎」です。
サ行・タ行の子音[k][t]と同じです。
上の口腔断面図のように、歯茎に向かって舌が盛り上がっています。
③「調音法」
「破裂音(閉鎖音ともいう)・摩擦音・破擦音・鼻音・接近音・弾き音」のうちの「鼻音」です。
鼻音とは、口腔内の呼気の通り道を塞いで、鼻(鼻腔)に呼気を通して出す音声です。
上の口腔断面図の ⇦ の部分で、鼻腔への道が開いています。ここに呼気を通して発します。
ナ行の子音[n]の他に、マ行の子音[m]も鼻音です。「マ・ナ・ノ」などと言って、感じてみてください!
※「鼻音」も「破裂音・破擦音」と同様に、呼気の通り道を塞ぐ音なので、口腔断面図は、舌が上につきます。
では、二[ɲi]について説明します。

/ニ/[ɲ]も/シ/[ɕ]/チ/[tɕ]と同じように、[n]が「硬口蓋化」した音なのですが、
上の口腔断面図のように、舌の盛り上がりの範囲が広いです。
調音点は「硬口蓋」「歯茎硬口蓋~硬口蓋」や「(歯茎)硬口蓋」(※歯茎硬口蓋音を含む広義の硬口蓋音)と示されたりしますが、日本語の /ニ/ は世界で話される[ɲ]の中でもやや歯茎硬口蓋に近いことから、調音点が「歯茎硬口蓋」と示されることが多いです。
(どこでもいいから、1つに統一してほしいですね…。)
テキストによっても、いろいろなことが書いてありますが、
私は細かいことにはこだわらず「歯茎硬口蓋~硬口蓋ぐらい(範囲が広い)」と覚えています!
[ɲ]…「有声 ※歯茎硬口蓋 鼻音」
※「硬口蓋」「歯茎硬口蓋~硬口蓋」「(歯茎)硬口蓋」とも示される。
/ニ/ は、音声記号では「ニャ行」のグループに入るので、/ニ/だけで覚えず、一緒に覚えましょう!
ニャ[ɲa]二[ɲi]ニュ[ɲɯ]ニェ[ɲe]ニョ[ɲo]
ナ行をまとめると、下のようになります。
ナ行 「有声 歯茎 鼻音」 /ナ ヌ ネ ノ / [na] [nɯ] [ne] [no]
ニャ行「有声 ※歯茎硬口蓋 鼻音」 /ニャ ニ ニュ ニェ ニョ/ [ɲa] [ɲi] [ɲɯ] [ɲe] [ɲo]
※「硬口蓋」「歯茎硬口蓋~硬口蓋」「(歯茎)硬口蓋」とも示される。
ハ行・パ行・バ行
ハ行は超特別です。
みなさんは、大昔、日本語のハ行音はパ行音で話されていたことをご存じですか?
ここでは、書きませんが、とりあえず「ハ行」は、昔はなかった。「パ行とバ行」があったと思ってください!
先に「バ行とバ行」を書いてから「ハ行」を書きます。
パ行
カ行とガ行に「無声音・有声音」の対立があるように、「無声音・有声音」で対立するのは「パ行とバ行」です。「ハ行」特別で、「パ行とバ行」の音声と全く異なります。
パ行は /パピプぺポ/ で、子音の音声記号は[p]です。
パ[pa]ピ[pʲi]プ[pɯ]ぺ[pe]ポ[po]
ピ[pʲi]にカ行で登場した[ʲ]が久しぶりに出てきました。
「ちょこっと硬口蓋化」の[ʲ]です。あとで説明します。
まず、/パ プぺポ/から説明します。
[p]…「無声 両唇 破裂音」

① 声帯振動の有無…【有声音・無声音】
カサタパハ行(キャ行やシャ行なども)の子音は無声音です。それ以外は有声音です。
ちょっと苦しいですが、「パ」も「゜」を取ったら、濁点「゛」をつけられます。
よって[p]は「無声音」です。
② 調音点
「両唇・歯茎・歯茎硬口蓋・硬口蓋・軟口蓋・声門・口蓋垂」のうちの「両唇」です。
「パ」と言ってみてください。上の口腔断面図の ⇨ の部分のように、上唇と下唇がくっつきますね。
肺から出る呼気を両唇(上唇と下唇)で妨げているので、調音点は「両唇」です。
他に、マ行の子音[m]の調音点も「両唇」です。「パ」「ぺ」「マ」などと言って、感じてみてください!
③「調音法」
「破裂音(閉鎖音ともいう)・摩擦音・破擦音・鼻音・接近音・弾き音」のうちの「破裂音(閉鎖音)」です。
調音点は違いますが、カ行・タ行の子音[k][t]と同じです。
[p]は、調音点である「両唇」で一時的に閉鎖をつくり、破裂させます。
※「破裂音」は閉鎖をつくるので、口腔断面図の両唇はくっつきます。
では、ピ[pʲi]について、説明します。
[ʲ]については、第1章のカ行のところに書きました。詳しくは ☞ 第1章の「カ行」をご確認ください。
ざっくり言うと、[ʲ]は硬口蓋化を表しますが、ちょっとだけ硬口蓋に寄るだけで、調音点は変わらないというものです。
ピ[pʲi]の場合も、舌が硬口蓋に向かって少しだけ盛り上がりますが、調音点は変わらずに「両唇」です。
ピ[pʲi]…「無声 両唇 破裂音」 ※[p]と同じ。[ʲ]が入るだけで調音点は変わらない。
/ピ/[pʲi]は音声記号では「ピャ行」のグループに入るので、/ピ/だけで覚えず、一緒に覚えましょう!
ピャ[pʲa]ピ[pʲi]ピュ[pʲɯ] ピョ[pʲo] ※エ段は無視
バ行
バ行は/バ ビ ブ べ ボ/です。子音の音声記号は[b]です。
バ[ba]ビ[bʲi]ブ[bu]べ[be]ボ[bo]
[b][bʲi]は[p][pʲi]が、有声音(声道振動あり)になるだけです。
有声音になるだけで、調音点と調音法は変わらないため、口腔断面図は[p][pʲi]と同じです。
[b]…「有声 両唇 破裂音」 ※[ʲ]が入っても、調音点は変わらない。
/ビ/[bʲi]は、ビャ行のグループに含まれます。一緒に覚えましょう!
ビャ[bʲa]ビ[bʲi]ビュ[bʲɯ] ビョ[bʲo] ※エ段は無視
ハ行
ハ行特別で「パ行・バ行」の音声と全く異なるので、単独で考えましょう。
ハ行は/ハ ヒ フ ヘ ホ/。
音声記号は、ハ[ha]ヒ[çi]フ[ɸɯ]ヘ[he]ホ[ho]です。
注意するのは、イ段の /ヒ/[çi]と、/フ/[ɸɯ]ですね。あとで説明します。
まず、/ハ ヘホ/の子音[h]から書きます。
[h]…「無声 声門 摩擦音」

① 声帯振動の有無…【有声音・無声音】
カサタパハ行(キャ行やシャ行なども)の子音は無声音。それ以外の子音は全部「有声音」です。
「ハ行」は濁点「゛」がつけられます。
よって、ハ行の子音[h]は「無声音」です。
②「調音点」
「両唇・歯茎・歯茎硬口蓋・硬口蓋・軟口蓋・声門・口蓋垂」のうちの「声門」です。
声門とは、上の口腔断面図の「声門」のところです。簡単に声帯の間の隙間と考えてください。
(上の口腔断面図は[h]のものではありません。すみませんが、[h]の口腔断面図はありません。気になる方は、ご自身で探してみてください。)
声門音は、声門を狭めて呼気を妨げて発する音です。
/ハヘホ/と言うと、感じられるでしょうか?ちょっと声門が締まる感じがします。
感じられなければ、こだわらなくてもいいです。
声門音は、日本語の調音では/ハヘホ/だけなので、そのまま覚えましょう!
③「調音法」
「破裂音(閉鎖音ともいう)・摩擦音・破擦音・鼻音・接近音・弾き音」のうちの「摩擦音」です。
調音点は違いますが、サ行の子音[s]と同じです。
[h]は、調音点である声門で摩擦させます。
(正確に言うと、舌をちょっと盛り上げて、口腔内でも摩擦させているそうです。)
私たち、けっこう難しいことやって調音していますね!
これは今感じ取っても忘れやすいので、/ハヘホ/「無声 声門 摩擦音」と、丸覚えのほうがいいと思います!
では、/ヒ/[çi]について、説明します。

[ç]…「無声 硬口蓋 摩擦音」
/ヒ/[çi]も/シ/[ɕ]/チ/[tɕ]/ニ/[ɲ]と同じように、「硬口蓋化」します。
上の口腔断面図のように、舌が広い範囲で、硬口蓋に向かって盛り上がっています。
調音点は「硬口蓋」になります。[h]の「声門」と全く異なるので、注意してください!
※摩擦音なので、舌は上にくっつきません。
次は、/フ/[ɸɯ]です。

[ɸ]…「無声 両唇 摩擦音」
/フ/[ɸɯ]の調音点は「両唇」です。
/フ/と言うと、両唇(上唇と下唇)が接近しますね。
そこで呼気を妨げているので、調音点は「両唇」です。これも[h]と全然違いますね。
※ /フ/[ɸɯ]の調音点は「両唇」ですが、摩擦音なので、口腔断面図の唇はくっつきません。
上の口腔断面図でご確認ください!
/ヒ/は「ヒャ行」のグループ、/フ/は「ファ行」のグループに入ります。
これらも/ヒ//フ/だけで覚えず、一緒に覚えましょう!
ヒャ[ça]ヒ[çi]ヒュ[çɯ]ヒェ[çe]ヒョ[ço]
ファ[ɸa]フィ[ɸi]フ[ɸɯ]フェ[ɸe]フォ[ɸo]
ハ行(パ行・バ行)をまとめると、下のようになります。
ハ行 「無声 声門 摩擦音」 /ハ ヘ ホ / [ha] [he][ho]
ヒャ行「無声 硬口蓋 摩擦音」 /ヒャ ヒ ヒュ ヒェ ヒョ/ [ça][çi][çɯ][çe][ço]
ファ行「無声 両唇 摩擦音」 /ファ フィ フ フェ フォ/ [ɸa][ɸi][ɸɯ][ɸe][ɸo]
パ行 「無声 両唇 破裂音」 /パ プ ペ ポ /[pa] [pɯ][pe][po]
ピャ行「[ʲ]が入るだけ」 /ピャ ピ ピュ ピョ/ [pʲa][pʲi][pʲɯ] [pʲo]
バ行 「有声 両唇 破裂音」 /バ ブ ベ ボ /[ba] [bɯ][be][bo]
ピャ行「[ʲ]が入るだけ」 /ピャ ピ ピュ ピョ/ [bʲa][bʲi][bʲɯ] [bʲo]
ポイントは「ハ行は特別」「有声と無声で対立するのはパ行とバ行」の2点です!
まとめ
第2章では、「サタナハ行」について、書きました。
この記事の内容をまとめると、下のようになります。一応全部書きますが、全部覚える必要はありません。
サ行の子音[s]タ行の子音[t]ナ行の子音[n]ハ行の子音[h]パ行の子音[p]をしっかりおさえれば、あとは「有声になるだけ」「硬口蓋化で調音点が変わる」「硬口蓋化[ʲ]が入るだけで調音点は変わらない」等で整理していけば、大丈夫です!
シャ行 「無声 歯茎硬口蓋 摩擦音」 /シャ シ シュ シェ ショ/ [ɕa] [ɕi] [ɕɯ] [ɕe] [ɕo]
ザ行(母音間) 「有声 歯茎 摩擦音」 /ザ ズィ ズ ゼ ゾ/ [za] [zi] [zɯ] [ze] [zo]
ザ行(母音間以外) 「有声 歯茎 破擦音」 /ザ ズィ ズ ゼ ゾ/ [dza][dzi][dzɯ][dze][dzo]
ジャ行(母音間) 「有声 歯茎硬口蓋 摩擦音」/ジャ ジ ジュ ジェ ジョ/ [ʑa] [ʑi] [ʑɯ] [ʑe] [ʑo]
ジャ行(母音間以外)「有声 歯茎硬口蓋 破擦音」/ジャジジュジェジョ/[dʑa][dʑi][dʑɯ][dʑe][dʑo]
タ行 「無声 歯茎 破裂音」/タ ティ トゥ テ ト/ [ta][ti][tɯ][te][to]
チャ行「無声 歯茎硬口蓋 破擦音」/チャ チ チュ チェ チョ/ [tɕa] [tɕi] [tɕɯ] [tɕe] [tɕo]
ツァ 「無声 歯茎 破擦音」/ツァ ツィ ツ ツェ ツォ/ [tsa] [tsi] [tsɯ] [tse] [tso]
※念のため /タチツテト/ の音声記号…タ[ta]チ[tɕi]ツ[tsɯ]テ[te]ト[to]
ダ行 「有声 歯茎 破裂音」 /ダ ディ ドゥ デ ド/ [da][di][dɯ][de][do]
ナ行 「有声 歯茎 鼻音」 /ナ ヌ ネ ノ / [na] [nɯ] [ne] [no]
ニャ行「有声 ※歯茎硬口蓋 鼻音」 /ニャ ニ ニュ ニェ ニョ/ [ɲa] [ɲi] [ɲɯ] [ɲe] [ɲo]
※「硬口蓋」「歯茎硬口蓋~硬口蓋」「(歯茎)硬口蓋」とも示される。
ハ行 「無声 声門 摩擦音」 /ハ ヘ ホ / [ha] [he][ho]
ヒャ行「無声 硬口蓋 摩擦音」 /ヒャ ヒ ヒュ ヒェ ヒョ/ [ça][çi][çɯ][çe][ço]
ファ行「無声 両唇 摩擦音」 /ファ フィ フ フェ フォ/ [ɸa][ɸi][ɸɯ][ɸe][ɸo]
パ行 「無声 両唇 破裂音」 /パ プ ペ ポ /[pa] [pɯ][pe][po]
ピャ行「[ʲ]が入るだけ」 /ピャ ピ ピュ ピョ/ [pʲa][pʲi][pʲɯ] [pʲo]
バ行 「有声 両唇 破裂音」 /バ ブ ベ ボ /[ba] [bɯ][be][bo]
ピャ行「[ʲ]が入るだけ」 /ピャ ピ ピュ ピョ/ [bʲa][bʲi][bʲɯ] [bʲo]
大変だとは思いますが、一緒に「シャ・シュ・ショ」等の拗音や、「ツァ・ツィ・ツェ・ツォ」等のカタカナ語でしか使わない音声も同時に潰しているので、この第2章までで、マラソンの25~30km地点まで来ています。
あと、【第3章 マ行・ヤ行・ラ行・ワ行】と、第4章【特殊音(撥音・促音・引く音)・日本語にない音声】でゴールとなります。
よかったら、第3章もご覧ください!
☞ 国際音声記号(IPA)について【第3章 マ行・ヤ行・ラ行・ワ行】
ご質問、ご相談等、お気軽にコメントをどうぞ。